JAXAテストフィールドにて小型ロボットプラットフォーム試作機の初期動作実験をおこないました.
私たちCAFEプロジェクトは、ムーンショット目標3「自ら学習・行動し人と共生するAIロボット」というグループにおいて
「多様な環境に適応しインフラ構築を革新する協働AIロボット」の研究開発を進めています。
CAFEプロジェクトは、Collaborative AI Field robot Everywhereからきています。
2050年における自然災害現場での
応急復旧イメージ
私たちが住む日本では、さまざまな自然災害が各地で頻発しています。そこに暮す人々の生活を守り、災害の被害を最小限に抑えるため、応急復旧の更なる技術開発が望まれています。
また、宇宙に目を向けると、国際協力の元、米国を中心としたアルテミス計画などの月面開発が進められています。
そこで、2050年に実現を目指すムーンショット目標として、ロボット技術により「自然災害の応急復旧」「月面有人探査の拠点構築」を設定しました。
左のイラストは、2050年における自然災害現場での応急復旧イメージを表しています。複数台のフィールドロボットが、センシングデータを元に災害の状況を正確に評価した後、ロボット協働作業を実施することで、想定外の状況に対応しながら災害の応急復旧に取り組みます。
2050年の月面におけるインフラ構築のイメージ
また、右のイラストは、2050年の月面におけるインフラ構築のイメージを表しています。こちらも、想定外の状況に対応しながら、複数台のフィールドロボットが自律的に動的協働作業を実施することでインフラ構築を行います。
災害対応と月面開発に必要な技術は、一見、異なるように見えます。しかし、実は、「多様な環境に適応しインフラ構築が可能なロボット技術」が求められる共通点があります。そこで、5年間のCAFEプロジェクトの研究目標を、これらの技術を備えたフィールドロボットシステムの研究開発としました。
CAFEプロジェクトでは、状況の変化に応じて臨機応変に対応できるロボットの実現を目指します。プロジェクトを進めるにあたり、この「臨機応変に対応する能力」を、「身体」「判断」「行動」の3要素に分け、並行して研究開発を行うこととしました。
臨機応変に環境に適応するロボットの「身体」を実現するため、「環境になじむロボットのハードウエア」を構築します。また、周辺環境の変化に応じた「判断」を実現するため、様々なセンシングデータよって環境を評価する 「メニーモーダル環境評価AI技術」の研究開発を行います。さらに、臨機応変なロボットの「行動」を実現するため、複数台ロボットによる「動的協働Physical AI技術」の研究開発を行います。この三つが上手く組み合わさることで、状況が変化する環境下でも臨機応変に対応できるフィールドロボットが実現でき、 「自然災害に対する応急復旧」や「月面における拠点構築」の現場において、その技術が生かされると考えています。
CAFEプロジェクトでは、多様な環境に適応しインフラ構築を行うことが可能なロボット技術の研究開発を推進していきます。
CAFEプロジェクト推進のプロセス図をこちらに記します。多くの共通点がある自然災害対応と月面インフラ構築ですが、環境未知性と自律必要性について見ていくと、その必要度に違いがあります。
左の図は、横軸が「環境未知性」、縦軸が「自律必要性」を表しています。例えば、自然災害対応に必要な技術は、自律必要性よりも環境未知性が大きいために、図の右側に位置します。また、月面インフラ構築に必要な技術は、環境未知性よりも自律必要性が大きいため、図の上側に位置します。
これを踏まえ、CAFEプロジェクトでは、この二つの技術の実現のためのベースとなる技術を「Adaptive Construction」と名付けて「自然災害対応技術」と「月面インフラ構築技術」の中間に位置づけました。まずは、この「Adaptive Construction」を実現するために「身体」「判断」「行動」の3分野に関する研究開発を進めます。
またこれと並行して、「月面インフラ構築」や「自然災害対応」の各々の分野で必要となるより具体的なロボット技術の研究開発も進めていきます。
皆さま、こんにちは。永谷圭司と申します。この度、内閣府のムーンショット型研究開発事業 目標3における「多様な環境に適応しインフラ構築を革新する協働AIロボット」のプロジェクトマネージャーを担当させていただくこととなりました。
本プロジェクトは「自然災害に対する応急復旧」ならびに「月面における拠点構築」を可能とするフィールドロボットの実現を目指しております。このためには、ロボット自らが、状況に応じて臨機応変に対処する能力が必要となります。そこで、本プロジェクトでは、様々なアプローチにより、これらの実現を目指していきます。
プロジェクトの紹介については「プロジェクト概要」に譲り、ここでは、本プロジェクトで私が最も大切にしております三つのことをお伝えしたいと思います。
まず、一つ目はプロジェクトの基本理念についてです。本プロジェクトの基本理念は、「人の役に立つ技術を創造すること」です。これは私がこれまでに大切にしてきたフィールドロボット研究に対する基本理念と同じものです。 「(自分の得意な)○○という技術を実現しました。後は、△△ができれば、これは役に立ちます。」という言い訳は決してせず、実用化までを見据えた技術開発を行う方針が、ここには込められています。
大切にしております二つ目は、研究者・技術者の横の繋がりです。本プロジェクトは、多分野間の協力が不可欠で「土木」「機械」「AI」のどれが欠けても成立しません。そのため、それぞれの分野の研究者が、お互いの分野を尊重しつつ密に情報交換を行い、横の連携を強固にした研究開発を進めたいと考えています。
最後の三つ目は、現場主義です。本プロジェクトでは、ロボットが活動できるような現場を人工的に設定して実証するのではなく、実現場での活動が可能なロボットの開発を心がけたいと考えています。
本プロジェクトの推進メンバーには、現在、各々の研究分野で活躍している大変パワフルな研究者たち・技術者たちが揃いました。とても嬉しく思っております。ぜひ、本プロジェクトの今後の成果をご期待ください。
プロジェクトマネージャー/東京大学 大学院 工学系研究科 特任教授
永谷圭司
1984年 大阪大学大学院基礎工学研究科修士課程修了。現在は、大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻教授、創造工学センター長、 コマツみらい建機協働研究所所長、ロボティクス、制御工学の研究に従事。工学博士。
大須賀 公一
大阪大学大学院工学系研究科 教授
1993年 筑波大学大学院修士課程修了,2010年 Bielefeld大学,博士(工学).現在はヤンマーホールディングスにて,農業,土木建設,海洋におけるフィールドロボティクスの研究開発に従事.
杉浦 恒
ヤンマーホールディングス株式会社技術本部中央研究所システム研究センター ロボティクスグループ グループリーダー
立命館大学非常勤講師、
名城大学非常勤講師
1990年横浜国立大学博士課程修了.株式会社東芝,(財)マイクロマシンセンター,岡山大学を経て2014年より現職.株式会社s-muscle,株式会社H-MUSCLEの代表取締役,および新学術領域「ソフトロボット学」領域代表.
鈴森 康一
東京工業大学 教授
1995年埼玉大学大学院博士前期課程修了.博士(工学,立命館大学,2014年),技術士(機械部門).日立造船,ボーマクジャパンなどを経て現在は土木研究所.情報化施工,建設ロボットなどの研究に従事
橋本 毅
(国研)土木研究所 先端技術チーム 主任研究員
1991年九州大学修士課程修了 。博士(工学)。 2013年より現職.岩盤工学,地圏環境工学をベースに地理空間情報の利活用,防災に関する研究に従事.
三谷 泰浩
九州大学大学院 工学研究院 附属アジア防災研究センター 教授
2008年東北大学大学院工学研究科博士課程修了.博士(工学).宇宙探査をはじめとしたフィールドロボティクス,テラメカニクス,自律移動制御の研究開発に従事.
石上 玄也
慶應義塾大学理工学部 准教授
2011年 総合研究大学院大学5年一貫博士課程修了.博士(工学).現在は,九州工業大学にて,宇宙ロボティクスの研究に従事.
永岡 健司
九州工業大学大学院工学研究院 准教授
1992年 京都大学大学院理学研究科物理学第二専攻退学.理学博士 (1994年)
宇宙科学ミッションにおいて,搭載機器開発,システムズエンジニアリング,プロジェクトマネージメント統括に従事,現在は,オープンイノベーションハブの枠組みで研究を推進.神戸大学客員教授.
上野 宗孝
宇宙航空研究開発機構 宇宙探査イノベーションハブ 技術領域主幹
2010年 Wayne State UniversityでPh.D.の学位授与.現在は,東京大学
i-Constructionシステム学寄付講座にて,AI,IoT技術を活用したインフラ建設,維持管理や,プラットフォーム技術の発展に取り組んでいる.
全 邦釘
東京大学大学院 特任准教授
2013年より東北大学大学院情報科学研究科教授.2016年から理化学研究所革新知能統合研究センター兼務.専門はコンピュータビジョンと深層学習.
岡谷 貴之
理化学研究所 チームリーダー
2009年 東京大学大学院博士課程修了.博士(工学).専門は構造工学・土木工学.インフラ構造物性能解析のデータ同化や,維持管理・設計・建設での機械学 習活用に関する研究に従事.
西尾 真由子
筑波大学システム情報系 准教授
1983年東海大学工学部卒.現在は、株式会社熊谷組にて、建設ICT、建設機械自動化および無人化施工技術の開発および研究に従事.
北原 成郎
株式会社熊谷組 土木事業本部 ICT推進室 室長
1985年 岩手大学大学院農学研究科修了 修士(農学).現在は、国際航業株式会社にて,火山噴火時の調査の無人化に向けた技術開発を含む砂防分野の調査・計画・設計等の検討業務に従事している.
島田 徹
国際航業株式会社・公共コンサルタント事業部 事業企画担当部長
2003年筑波大学大学院博士課程修了,博士(工学).自律移動ロボット,ロボットのための通信,災害対応ロボット,無人化施工などの研究に従事.
羽田 靖史
工学院大学工学部 准教授
1984 年東京大学大学院修士課程修了.工学博士(1989年,東京大学).現在は,東京大学大学院工学系研究科教授および同研究科人工物工学研究センター長.サービスロボティクスの研究・社会実装等に従事.
淺間 一
東京大学大学院工学系研究科 教授
2007年 奈良先端科学技術大学院大学博士後期課程修了.博士(工学).現在は,同大テニュアトラック教員として,ロボットラーニング研究室を主宰.機械学習と実世界ロボット応用に関する研究に従事.
松原 崇充
奈良先端科学技術大学院大学研究推進機構 特任准教授
1986年 東北大学大学院博士課程修了.工学博士.研究分野はテラメカニックス.現在は機械と地盤の相互作用に基づく地盤評価に関する研究に従事.
高橋 弘
東北大学大学院環境科学研究科 教授
1991年 東京工業大学大学院修士課程修了.博士(工学).富士通研究所,東京工業大学,東京大学生産技術研究所を経て,2007年より現職.サービスロボット,認知症ケアの研究に従事.
倉爪 亮
九州大学大学院システム情報科学研究院 教授
博士(工学)(2007年,筑波大学).茨城県工業技術センター,産業技術総合研究所,筑波大学,成蹊大学を経て,現職.ロボット制御技術の社会実装や触覚技術に関する研究に従事.
竹囲 年延
弘前大学理工学部機械科学科 助教
1997年 筑波大学大学院博士課程修了.博士(工学).現在は奈良先端大にて,コンピュータビジョン・グラフィクスの研究に従事.
向川 康博
奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 教授